天然歯を3D印刷で再現できる材料と技術の開発【 生体材料学分野 池田 弘 准教授 】
天然歯を3D印刷で再現できる材料と技術の開発
生体材料学分野
池田 弘 准教授
研究内容の概要
天然歯は、皮膚などの軟組織と異なり、自己再生能力がほとんどなく、むし歯、外傷、歯周病で失うと元には戻りません。現在の医療技術では、歯の代替としてセラミックスの被せ物、インプラント、入れ歯などを使用しますが、これらの方法では完全に復元することはできません。また、歯の再生技術も研究されていますが、まだ実現に至っていません。そこで私は、天然歯の性質を模倣した人工歯を開発し、失った歯を再現する技術の開発に取り組んでいます。この目標を達成するために、3Dプリンタを使用して天然歯の形状と機能を模倣した人工歯を立体的に印刷する技術を考案しました。これまでの研究では、最も硬い組織であるエナメル質と同じ硬さをもつ材料(人工エナメル質)を3D印刷する技術を開発しました。この人工エナメル質はむし歯の治療に利用できると考えています。また、象牙質と同じ柔軟性をもつ材料(人工象牙質)も3D印刷できるようになりました。本技術を使えば、歯の組織の90%以上を人工物で再現することが可能です。残された課題は、歯を歯根膜に結合させる材料(人工セメント質)を作ることです。これが完成すれば、失った歯を3D印刷で再現し、自分の歯のような見た目や食感を取り戻すことができるかもしれません。
本研究成果の一部は、Journal of Dental Research(2021年5月12日)および特許7437200(2024年2月14日登録)にて公開しています。
研究者からのコメント
生体材料学を基に新しい医療用材料と技術の開発を目指しています。最近では、3Dプリンタで印刷できる新素材を開発し、生体材料として応用することに挑戦しています。セラミックスやレジンに加え、細胞などの生体組織も研究対象です。一緒に研究する仲間(大学院生など)を募集しています。本研究に興味がある方は、ぜひご連絡ください。
参考文献:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/33978514
参考特許:https://www.j-platpat.inpit.go.jp/c1801/PU/JP-2020-050215/10/ja
研究者情報(ORCID):https://orcid.org/0000-0002-718